星形の庭とカナリア

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「絶体絶命のピンチに陥ったことってありますか?」

 

目黒川沿いのバーで、バーテンダーの俵さんに尋ねてみた。キッチンで作ってもらったオムレツは、あおさの餡がたっぷりかかった和風のもので、バターの香りと相まって、とても美味しい。

 

「そこそこピンチ、くらいだけど」 俵さんは苦笑しながら言う。

「大型台風の影響で瀬戸大橋が封鎖して、香川県に閉じ込められたことがありましたね。でも、おカネがなくてホテルに泊まれず、豪風豪雨のなかビルの非常階段で寝てました」

 

……なんだか法にふれていそうなので、それ以上はふれないでおく。
単純にマネをしてはいけない話である。

 

「台風が過ぎると、経験したことのないほど爽快な朝だったな。空腹で駆け込んで食べた、はなまるうどんの温玉ぶっかけが、自分史上最高のうどんです」

 

ピンチの先には光明がある、ということだろうか。そう考えると、お見合いくらい(前回参照)頑張れる気がしなくもないこともない。つまり、ない。

 

「親孝行しなきゃなとは思うんですが……」

つい愚痴をこぼしてしまう。

 

「僕にも、かつて横暴な恋人がいたんですよ」

学生時代、彼女と1000ピースのパズルを作ったことがあった。せまい下宿で、安酒を飲み、くだらない話をだらだらしながら作っていたのだが、いっこうに完成しない。とうとう深夜になり、パズルを崩すか崩さないかで喧嘩になった。
「このままでは、寝るスペースがない」
そう無慈悲に告げられ、僕は涙したものだ。

「10時間だろうが、24時間だろうが、時間なんて捨てるほどあるって、どうしてだか、そう思っていたんですよね」

 

エーテルみたいな味のするリキュールを舐めると、MPが微増する気がした。
これなら新幹線に乗らずとも、デジョンで帰省できそうだ。

 

 

 

 

カナリアを指一本で弾く乙女

 

 

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