君はトワイライトを見たか

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新宿五丁目の交差点でキャロル・キングを聴いていると、背後から彼女が肩をたたいた。

 

「久しぶりやね」
僕よりも1年長く東京にいるのに、相変わらず方言が直っていない。高校、大学と世話になったK先生にクリスマスプレゼントを贈るために、年に1度こうして会うのが僕らの決まりだった。

「どう、儲かってる?」
「しんどいだけ」
このやりとりも恒例で、互いに儲かった試しがない。

 

ビックロ新宿東口店の4階で、Jaybirdのワイヤレスイヤホンを見繕う。なんでも、K先生はスマホデビューしたものの、イヤホンジャックがないことに気づき、毎日泣いているらしい。一刻も早くなんとかしてあげなければ……。

 

サービスカウンターのおねえさんに宅配伝票を託して一仕事終えると、彼女の希望で6階に向かった。

「あれ、LEGO見ないの?」
「この前、買ったばっかやけん」
そう言うと彼女は電子ピアノのコーナーで適当にトリルを弾いて遊び始めた。

 

「なんか一曲弾いてよ」
「やだよ、恥ずかしいし」
ちょうど、隣の小学生くらいの女の子が「子犬のワルツ」を弾き始める。二人して、じっと聞き入った。

「子供のころ、リカちゃん人形のオルゴールピアノを持ってた。鍵盤も自動で動くやつ。あれ、どこいったんやろうな」
「なんの曲やったん」
「それが思い出せへんのや」

けれどきっと僕の知らない曲なのだろう。

「さて、焼き牡蠣でもしこたま食べるかね」
「いいけど、飲み過ぎんなよ」
小突きあいながら、僕らは三丁目の光に消えていくのだった。

 

 

 

背景が白に染まれば冬は来ぬ

 

 

 

 

 

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