デルタで踊るには

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秋晴れの午後、鴨川上流の河川敷で斎藤くんと昼食をとることにした。斎藤くんのお母さんお手製のヤムウンセンと、川べりのイスラエル料理店で購入したピタサンドを広げる。

 

なぜアラサーの男2人が、ヌートリアの襲来に怯えながらオーガニックパーティピープルみたいなことをしているかというと、昨日出席した結婚式の余興で、巨大なミニオンズのレジャーシートを獲得したからだ。偶然にも式では黄色と青のネクタイをつけていて、我ながら「のび太みたいな配色だなぁ」と思っていたのだが、黄色と青といえば、時代はミニオンズらしい。

 

レジャーシートを這い上がるデカい蟻と格闘しながらロングの缶ビールを開ける。友人の門出を祝って乾杯。

「まさか小林(新郎)がフルートで孫悟飯の『口笛の気持ち』を吹くとは思わなかったな。あれは誰得だったんだろう」
「たぶん新婦の元彼がナメック星人だったんだよ」

 

目の前のデルタでは、学生たちがマイムマイムの音楽とともに、合ハイにいそしんでいた。70年代かよ。ふと横を見ると、斎藤くんが顔を青くしている。
「高校時代、フォークダンスで一緒になった女子の目が死んでいたのが忘れられないんだ」
こいつの闇は深いな……。

 

「まぁまぁ斎藤くん。どうだい、素敵な丸い石を見つけて水切りでも興じようじゃないか」

すると、斎藤くんの死にかけていた目が光る。
「瀬戸がそういうくだらないことを言うんじゃないかと思って、碁石を持ってきたんだ。これなら10段は軽い」(水切りの跳ねた回数の助数詞は「段」である)

「碁石……。日本棋院に怒られない?」
「オセロもあるよ」
「そういう問題じゃない」

 

結局、鴨川の美化を考慮して、純度100%鴨川製の丸石を探した。
「自然に還れ!」
とルソー的セリフと共に石を投じる斎藤くんのインテリジェンスに惚れ惚れしたが、結果は3段と振るわなかった。

 

気が付けば、合ハイの大学生も退散し、いよいよヌートリアの襲撃が時間の問題になってきた。

「どうでもいいことをして過ごした日は、どうでもいいものを食べて解散するか」と正論をかます斎藤くん。
「あ、それなら」と僕。
「今まで黙っていて、好物を聞かれても鯖寿司とごまかしてきたんだけど、本当はかけそばのつゆでどろどろになったコロッケが好きなんだよね」

 

「そんなもの関西にはない」と言い張る斎藤くんを引きずって、僕らは鴨川をゆっくりと下り始めた。

 

 

深爪に寄り添ひ灯る秋蛍 

 

 

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