秋末にバラは咲く

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歩いているときは、だいたい数を数えている。1、2、3、4・・・・・・121くらいになったところで、無意識のうちにまた1から数え始める。1、2、3、4・・・・・・。何かに呪われているんじゃ、と言われることもあるが、物心ついた頃からそういう仕様だ。

 

反復するのが好きでたまらない。生まれ変わったら毎日定点観測しても、みじんも動きのない人生を送りたい。しかし社会人ともなると、ローリングストーン並に日々動き回らなければならない。出張も然り。大阪市内でのセミナーを終えると、帰りの新幹線まで思ったよりも余裕があった。

 

コーヒーショップでカフェオレをテイクアウトして、難波橋を渡る。橋の下には、堂島川土佐堀川に挟まれた中洲「中之島」がぽかんと浮かんでいる。この地はバラ園として整備されていて、春と秋には色とりどりの花が散歩者を楽しませていた。

 

「あのう、すみません」

橋の欄干にもたれてぼーっとしていると、若いカップルに声を掛けられた。

「この辺りに紅茶専門店があると聞いて来たんですが」

「ああ、それなら川べりに見える、ほら、あの洋風な建物ですよ」

そう指差すと、二人は嬉しそうに言った。

「泳いでいけそうですね」

「いや、11月じゃ無理だよ」

年中無休で無理なのだが、菩薩的メンタルで微笑む。

 

秋のバラは、春よりも一輪一輪ひっそりと咲いている。その隙間に夕日が差し込んでは染めていくのを見ていると、なんだか全てなかったことのような気がしてきた。このまま定点観測を続けていると、じきに真っ暗になって、また朝が来るのだろうか。そんなことがあるのだろうか。

 

ふと先ほどのカップルをかえりみた。彼らはもう橋を渡り切ろうとしている。目の前には中之島が浮いている。何だか悪いような気がして下に降りることははばかられ、駅へと歩き出した。どこまで数えたかは、また忘れてしまった。

 

 

終電をわざと見送るかじかんだお前の指をぽきぽき鳴らす

 

 

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