もつ鍋とノスタルジィ

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月曜から2日間の大阪出張が始まる。せっかくなので前日入りして、のんびり過ごすことにした。

 

チョイスしたのは、大阪市北部にある民泊風ホテル。何が「民泊風」なのかというと、キッチンが付いている。ここでお手製のもつ鍋を食べつつ、明日への英気を養おうという建設的な計画である。

 

「なんだこのウェスタンな部屋は……」

オートロックを突破して部屋に入るなり、斎藤くんが言った。大学同期の彼は、楽天で良質な肉を探すことをライフワークにしている。今回は「もつ係」としてゲスト参加してもらった。

 

しかしながら、斎藤くんが驚くのも至極当然で、この民泊ホテルは予約した僕も予想外のカウボーイ仕様だった。ここでもつ鍋を作るのは、芋煮会の河川敷でパンケーキを焼くくらい場違いな感じがする。

 

「大丈夫、住めば都だよ。それより例のものは?」
そう急かすと、斎藤くんがビニル袋をかざして見せた。
「ホルモンミックス600g。ちゃんと解凍してきたぞ」

 

野菜類や鍋スープは近くのローソンストア100で購入済みである。楽天の誇る極上ホルモンを投入し、かるく煮込む。木製のしゃれたローテーブルに鍋を着陸させれば準備は万端だ。ウェスタンな雰囲気に敬意を払い、コロナビールで乾杯する。

 

「そういえば、小林が結婚するんだよ」
「へえ、それはめでたいね」
「あと、須原が転勤先の高知で、なぜか新居を建てたらしい」
「へえ、それはロックだね」

鍋をつつきながら、当たり障りのない近況トークに花が咲く。
だが、しかし――。

 

「斎藤くん。いやいや、もっと厭世的な話をしようよ」
我々は罪を憎み人も憎み、大学時代はカンニングを見つけることを生きがいにしている某教授を呪おうと、本気で「丑の刻参り やり方」と検索した仲じゃないか。

 

「明日からテンションを爆上げして出張なんだ。なにか憂鬱な話をしてよ」

反発運動の物理学かよ、瀬戸はゆがんでるなぁ、と言いながらも、斎藤くんが口を開いた。

 

「この前、実家に帰省したら、母親が高校時代のクラスTシャツをパジャマ代わりに着ていたんだよ。久々に目の当たりにして戦慄した」

 

うぅ、すでにツラい。振っておいてなんだが、聞くんじゃなかった。

 

「クラスTシャツ……?」
「文化祭で結束力をアピールするために、作成されたものだよ。円環状にクラス全員のニックネームが描かれている。……あとは分かるね?」

「のっちとか、ジュンとかが並ぶなかで」
「……」
「さいとーさん、だったんだ」
「!?」

 

こいつの名は斎藤。一人だけ「斎藤さん」はさすがに可哀そう。「さいとうさん」。うーん、もう少しくだけた感じがほしい。それゆえの、「さいとーさん」。実行委員の突き抜けた優しさである。

 

「……うん、無問題。僕らは誰しも似たような青春時代。コロナもう一本どう? ところで、今のドSな性格はいつ誕生したの」

 

「『美味しんぼ』で心を病んだ女性に、懸命に芽を吹きだしたフキノトウをあえて食べさせるシーンを読んだのがきっかけだね」

 

あ、それあかんやつ。

 

 

 

 

迎え火や偶然世界を彩れり

 

 

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