西新宿のジンギスカン

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『今晩、空いてる? ジンギスカンを食べに行こうよ』

 

新宿伊勢丹の化粧品カウンターで、ちょっと不安になるほど真っ赤なルージュを引いてもらっていると、カエさんからラインが届いた。

「今週入ったばかりの新色ですよ」とおねえさん。たしかに素敵だが、「赤いルージュの女」とか呼ばれそう。学生時代、真緑のリュックをいつも背負っていたので、「緑のリュックの人」とひそかに呼ばれていたのを知り、微妙な気持ちになったのを思い出す。

 

『新宿をウロウロしていたところ。どこのお店?』

 

そう送ると、素早く返信が来る。ちょうど西新宿に目当ての店があったようだ。JRの西口改札で待っていると、人の流れに同化して、カエさんが姿を現した。

 

さっそくジンギスカン屋に滑り込む。L字のカウンターは、会社帰りのサラリーマンや飲み会らしき学生たちで賑わっていた。

生ラムをもにゅもにゅ食べながら、二人前のタレ漬けラムと野菜を焼いていく。至極良い香りだ。肉を焼いていると、肺活量が増える。

 

「そういえば」とカエさん。

スピッツに、ジンギスカンみたいな歌があるんだよ」

 

そんなはずはなかろうと思う。スピッツのファンがどこで聞いているのか分からないのだから(10億人はいるはず)、テキトーなことを言うと命取りになるぞ!

 

新鮮なラムを噛みしめていると自然とビールが進む。ここらでゆっくりマッコリでも、と壁際のメニューを眺めた。すると「電気ブラン」があることに気付く。京都にいた学生時代、森見登美彦氏の『夜は短し歩けよ乙女』をリスペクトして、よく飲んでいた。なんというか森林のなかで道草をむしゃむしゃ食べながらウイスキーを飲んでいるような味。

 

ロックにしてもらい、数年ぶりにしみじみ飲んでいると、カエさんが隣でニヤついている。

「これが本当の、電気羊だね」

・・・・・・まあ、肉が旨いので許す。

 

店を後にすると、大きな月が出ていた。ネオン街には星が降らないから、ありがたいことだ。「このまま歌舞伎町に突入電流する!」とカエさんがゴキゲンなので、ありがたく放って帰ることにした。

都営大江戸線乗り場まで、これから深く潜らなければならない。ありがたいことに大きくふくらんだ肺活量で、息を思いきり吸って、深く、深くへ――。

 

 

終電のダリアこちらを振り向かず

 

 

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