マチネの動物園

f:id:udon402:20181103075615j:image

 

カエさんと動物園に出かけた。平日にアラサー女子2人が上野に降り立つ。

 

「イラストの参考にしたくて」

一眼レフを首から下げたカエさんが言う。彼女は、健康本などを手がけるイラストレーターなのだが、絵本も描いてみたいのだそうだ。園内には幼稚園児の団体がちらほら。あの、親に襟足だけ伸ばされた男の子みたいなデザインの帽子は、いつから流通したのだろう。

 

マップを物色していたカエさんが驚いた声を上げる。

「サイがいるんだけど」

 

まあ、天下の上野動物園だから、サイくらいいるでしょう。そんなことより、ビールが飲みたいでござる。しかし、興奮は止まらない。

「サイって空想上の生き物じゃないの?」

 

まじか。絶滅危惧種ではあるけれど、ちゃんと実在する。そう説明しても、まったく信用してくれない。一見にしかず、ということでサイエリアに向かう(サイゼリヤではない)。2本のツノが立派なクロサイが、のそのそと出迎えてくれた。

 

「あんなの、トリケラトプスじゃん!」

馴染みのビアバーに戻って乾杯した後も、カエさんは感心しきっている。隣では、不良教授の紺野さんが腹を抱えて笑っていた。「僕は昔、数学者になるか、生物学者になるか、大いに迷いましてね」

 

「動物園に行くと、なんだか気疲れします。こっちは興味津々で動物たちを観ているけど、あちらは私たちをどう思っているんでしょうね」

そうぼやく私に、紺野さんが言った。

 

「いえいえ、人間のほうが不可思議ですよ。先日、夜遅く帰路に就いていると、普段は誰もいない小さな公園に、10人くらいがたたずんでいたんです」

それは、もはや廃れたポケモンGO民では・・・・・・。

 

一方、カエさんは

「夢でも見ていたんじゃありません?」

と笑っている。「夢喰いバクに食べられちゃいますよ」

 

・・・・・・ん、待てよ。

「カエさん、バクも実在するからね」

 

 

 

カタカナを忘れた処女に見つめられ目覚めることのないみのたうろす

――パブロ・ピカソ「Minotaure endormi contemplé par une Femme」(1933)に寄せて

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。